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    二岐山のこぶなら

    巨木の写真

    撮影日:2023.05.26 【01】二岐山の中腹に潜在する国内最大級のミズナラ、肥大した根本のコブが特徴的 二岐山のこぶなら-01
    【02】 二岐山のこぶなら-02
    【03】 二岐山のこぶなら-03
    【04】 二岐山のこぶなら-04
    【05】 二岐山のこぶなら-05
    【06】 二岐山のこぶなら-06
    【07】 二岐山のこぶなら-07
    【08】 二岐山のこぶなら-08
    【09】 二岐山のこぶなら-09
    【10】 二岐山のこぶなら-10
    【11】 二岐山のこぶなら-11
    【12】 二岐山のこぶなら-12
    【13】 二岐山のこぶなら-13

    巨木の基本情報

    巨木の名前 こぶなら [1][2]
    樹種 ミズナラ (水楢)
    幹周 7.46m [2], 9.03m [3], 7.76m (実測)
    樹高 20.6m [2], 23.0m [3]
    推定樹齢 300年以上 [3]
    特徴 肥大した根本のコブ、傾斜地の生育
    保護指定 不明
    所在地 福島県岩瀬郡天栄村湯本 (二岐山の中腹)
    所在施設 国有林
    撮影日・状態 2023.05.26 : 目立つ損傷なく樹勢は良い様子、東側 (斜面下側) の根本の土砂が流出気味
    アクセス
    東北道・白河ICから約41km (橅山荘の前まで)
    電車 JR東北本線・新白河駅から約40km、会津鉄道・湯野上温泉駅から約15km (橅山荘の前まで)
    参考情報 ■外部ウェブサイト
     [1] 天栄村ホームページ  :広報誌のバックナンバー (PDF) にこぶならの情報あり
     [2] 湯本森・里研究所   :湯本地区の自然の調査・保護・活用を主眼とする一般社団法人
     [3] 巨樹巨木林データベース:当巨木の登録あり (2021年度の追加調査記録、全国巨樹巨木林の会員)
     [4] 文化遺産オンライン  :文化庁が運営するサイト、日本一と称された小黒川のミズナラの情報あり
     [5] 人里の巨木たち    :日本一だと思える巨木の個人サイト、館越山神社のミズナラを参照
    ■少遠景の記録
     [6] 湯本八幡神社のスギ  :天栄村の湯本地区、湯本温泉街の鎮守、スギ巨木が多数
     [7] 御鍋神社のサワラ   :天栄村の湯本地区、二岐山の登山口の手前に鎮座、森の巨人たち100選
     [8] 御鍋林道のミズナラ  :天栄村の湯本地区、二岐渓谷沿いに続く林道の入口付近

    巨木と雑記.個性も際立つ国内最大級のミズナラ

     福島県の南部に位置する天栄村。 南会津の下郷町に接した西部の湯本地区は、二岐山を筆頭に1500m級の山々が連なる山郷です。 二岐山は以前から注目していた山でした。 南会津や日光の山々を見渡せる好展望の山頂。 麓には幽玄な景観の二岐渓谷。 そして渓谷に面した登山口の近くには、森の巨人100選の一本である御鍋神社のサワラ [7] があります。 さらに登山コースから離れた中腹には、国内最大級のミズナラが潜んでいるのです。 まこと素晴らしい天栄村の大自然。

     二岐山のこぶなら。 その存在は湯本森・里研究所 [2] の情報を元に知りました。 2021年から湯森研 (略) はこぶならの本格的な調査を始め、その活動が複数の新聞社から報道。 ツイッターでも拡散され、私も知ることができたのです。 こぶならが潜んでいるのは道標なき原生林の中。 普通ならガイドが必要なところですが、 私はある情報をもとに手探りで辿り着くことができました。

    cm-二岐山のこぶなら-01 【01】こぶならの周囲の様子。ミズメの若木が多い。他にはクロベ、ブナ、ミズナラの大木も複数在った。 地表を覆う笹薮が予想より薄かった。これはシカによる影響らしい。
    cm-二岐山のこぶなら-02 【02】幹周を測ってみた。根本の地表が最も高い山側 (反対側) から約1.3mの高さで計測。 上記巨木の写真12の位置を基準点とした。 このように斜面下側から見るとけっこう高い位置となる。
    cm-二岐山のこぶなら-03 【03】地表の高い山側を基準に計測した幹周は約7.76m。 湯森研 [2] の数値と大きな差はない。 巨大なコブから上のくびれた位置でもこれほど太い。 コブを含める根周は10m近くあるかもしれない。


     こぶならの感想。 湯本で炭焼きが盛んに行われていた昭和初期頃には、 地元の人々に知られていたそうです。 こぶならは伐採されずに残った。 その理由は大きすぎて切れなかったという他に、 この只ならぬ威容に畏怖を覚えたからでしょう。 複数の顔、獣のような顔が浮き出た、荒々しく巨大な根本のコブが目を引く。 主幹の山に向けた反対側も見事、じつに逞しい背中をしています。 山の神霊が宿っているかのような、強い意思を感じる樹容。 この巨樹に祈ることで、山の意思と繋がれそうな気がします。 二岐山、湯本の豊かな大自然のシンボルたる巨樹。福島県の宝です。

    巨木と雑記.場所を非公開とする理由

     湯森研 [2] がウェブサイト上で公開している、 こぶならの調査報告書を読んで思うところがありました。 天栄村としても、国内最大級の健全なミズナラとして、その高い価値を再確認。 今後は保護を進めて、森林環境や郷土史の学習の場や、 観光資源として活用していく方針があるようです。 湯森研の報告書には、 踏圧による根本の損傷や、入山者の事故についての懸念も書かれていました。 ここはクマが徘徊する山域であり、過去にスズメバチに刺された入山者も居たそうです。 当面はこぶならの保護と入山者の安全のため、 見学にはガイドツアーによる先導を主体とし、詳細な位置は公表すべきでないとしています。 このため少遠景でもこぶならの位置は非公開とします。 こぶならを見たい人は、湯森研が主宰するガイドツアーに参加してみてください。

    巨木と雑記.こぶならは全国5位以内のミズナラか

     全国に数あるミズナラの巨樹の中で、こぶならは何位くらいなのか気になりました。 そこで巨樹巨木林DB [3] にある全国上位10位を選出 (以下表)。 すると、こぶならは第4位でした。流石に上位。 しかし色々と疑問に思えるところがあります (続く)。

    順位 KDB-ID 呼称 幹周 所在 位置
    1 6273 不明 11.3m 秋田県仙北市角館町 (小影山) 不明
    2 34844 小黒川のミズナラ 9.40m 長野県下伊那郡阿智村清内路 地図リンク
    3 1654 不明 9.39m 青森県むつ市脇野沢田ノ頭 (館越山神社) 地図リンク
    4 71755 こぶなら 9.03m 福島県岩瀬郡天栄村 非公開 (二岐山の中腹)
    5 77394 不明 7.75m 北海道室蘭市香川町 地図リンク
    6 35519 不明 7.70m 長野県下高井郡木島平村 (カヤノ平) 枯死
    7 68647 不明 7.68m 石川県白山市市ノ瀬 (別当出合) 不明 (登山センター付近?)
    8 37160 政板のミズナラ 7.62m 岐阜県高山市一之宮町政板 地図リンク
    9 6362 不明 7.30m 秋田県大仙市太田町 (真木山国有林) 不明 (薬師岳の登山口付近?)
    50803 不明 7.30m 鳥取県西伯郡大山町桝水一ノ沢 不明 (大山の南西の谷間?)
    77167 吾妻のミズナラ 7.30m 山形県米沢市李山字火焔 (大平温泉) 地図リンク
    10 77201 不明 7.23m 富山県富山市 不明

     巨樹巨木林DB [3] に記録された上位4位までのミズナラについての疑問。 まず、こぶならの幹周が湯森研 [2] および私の計測値とかけ離れています。 2021年の追加調査での幹周が9.03m。 これは計測の基点が地表の高い山側ではないか、 または地表から水平ではなく斜めに計測したことが考えられそうです。 次に第2位の小黒川のミズナラ。 この幹周も実際より太そう。 環境庁 [4] が公表している情報での幹周は7.25m。この数値が実質らしい印象を受けます。 次に第3位の館越山神社のミズナラ。 これは人里の巨木たち [5] で紹介されています。 根本付近から複数の支幹に分かれていて、それぞれの合算値としているらしい。 実質の幹周は6mくらいに見えます。

     以上のことから、こぶならの幹周を私の計測値7.76mとすると、全国第2位となる可能性が!?。 湯森研の厳密な計測値7.46mでは第5位くらいとなる。 ちなみに、第1位の小影山のミズナラは、今も存在しているのでしょうか。 情報がまったく見つからない。どのような姿をしているのか。 とりあえず、こぶならは全国でも5本の指には確実に入るであろう、素晴らしいミズナラの巨樹です。