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  • 旅日記TOP「風弦」~南アルプスを背景に大武川にそびえる巨大オブジェ

    「風弦」~南アルプスを背景に大武川にそびえる巨大オブジェ(2019.04.01)

    山梨県は北杜市の南西部にある、他では見られないような景観のところ。 日本三大桜の一本、山高神代桜のある実相寺から、西に直線で約3㎞。 そこは大武川の上流域、甲斐駒ヶ岳をはじめとした、 間近に迫る南アルプスのお膝元です。 そんな雄大な山岳風景を背に、そびえたつ巨大な鉄の尖塔。 著名な芸術家の作品である風弦(ふうげん)をご紹介します。
    (写真:風弦の足元より)

    大武川砂防公園にある風弦

     南アルプスの北部に連なる甲斐駒山脈。 その主峰である甲斐駒ヶ岳(2967m)と鳳凰三山から生まれる大河が大武川。 上流域には支流である石空川との合流点があり、そこにそびえ立つオブジェが風弦です。 堤防上は大武川砂防公園として整備。 立入って間近に風弦を見学することができます。

     風弦は高さ30メートルもある巨大な鉄のオブジェ。 特徴は四角錐状の構造、北側への傾き、張られた数本のワイヤー、吊られた岩のような鉄塊など。 初見での印象は強烈、脳が揺れました。 神々しい大山脈を背に、2つの大河の合流点にそびえ立つ風弦は、じつに決まっている立姿。

    風弦-見出-01_01 風弦:東側の足元から見上げて。左奥に見える冠雪した高峰が甲斐駒ヶ岳。 鉄製のため錆が出ているが、それがまた良い風合いになっていると感じた。
    タイトル-見出-01_02 駒城橋:風弦から大武川の下流に架かる橋、県道612号線を渡す駒城橋からの眺め。 中州のように見える石空川との合流点に風弦の姿が見える(写真中央)。 この橋からの眺めは素晴らしいものだ。
    タイトル-見出-01_01 駒城橋:上記写真の風弦部分の拡大。 岩らしきものを吊っているため、初見では河川工事用か石材業用のクレーンなどに見えるか。
    タイトル-見出-01_04 駒城橋:橋の上からの眺め、甲斐駒ヶ岳の拡大。 じつに神々しい山容の甲斐駒山脈の盟主。 太古から神宿る山と信仰されてきたのも頷ける。 いつか登ってみる予定。
    タイトル-見出-01_05 駒城橋:橋の上からの眺め、甲斐駒ヶ岳から早川尾根を経て南に連なる鳳凰三山の拡大。 右から地蔵ヶ岳 (2764m)、観音ヶ岳 (2841m)、薬師岳 (2780m)。 甲斐駒から縦走してみたい…。

    風弦が伝えるものとは?

     風弦とは何なのか。作品テーマなど考える前に、まずは制作者について。 愛称「KUMAさん」こと、著名な芸術家である篠原勝之氏。 篠原氏は鉄・ガラス・石などを素材に、数多くのダイナミックな作品を生み出しています。 TV出演もよくされていたので、お顔を知っている方も多いはず。 風弦の制作年は1994年6月。 篠原氏の作品群の中でも、最も背の高いものでしょう。

    風弦-見出-02_01 風弦:頭頂部位には7本の鉄棒が貫通、交差して上下に連なる。 地面と繋がるワイヤーは、岩を吊るものを除いて4本。 頭頂部の先端に避雷針らしきもの。地面へ続く導線は内蔵されているか。
    風弦-見出-02_02 風弦:足元の基部には定礎がある(次の写真)。 完成から25年が経過(2019年時点)。 さびのある貫禄ある風合いに。 周囲にはマツ科(アカマツ?)の若木たちが茂っていた。
    風弦-見出-02_01 風弦:定礎に刻まれている文面の内容。 武川村とは北杜市に合併する前の当地の村名。
    風弦-見出-02_04 風弦:本体鉄柱と張られたワイヤーから、微かな振動が伝わってくる。風の音。
    風弦-見出-02_05 風弦:吊られた岩のような鉄塊(中は空洞)は、時間の経過でより岩らしい風合いになっていた。 真下から除くと金属らしい質感が残っていた。この岩が意味するものとは…?
    風弦-見出-02_06 風弦:西側から離れて。鉄柱から地面へ伸びる全てのワイヤーを青色でなぞって強調。 なんだか楽器のように見えてきた?
    風弦-見出-02_07 大武川:風弦の側から河床に下りて。風弦の背景となる雄大な甲斐駒山脈の風景。

     さて、風弦とはいったい何なのか。 風の音を奏でる楽器をモチーフとした、このパワースポットのシンボルである御柱。 そんな印象を持ちました。 ギターに例えれば、鉄柱がネックとヘッドの部分に見えませんか。 ボディは大地、弾き手は神様かな。 眼前にそびえるのは、甲斐駒ヶ岳と鳳凰三山が屏風のように連なる山嶺。 そこから生ずる大武川と石空川が交わる当地は、 大地のエネルギーが集まった偉大な景観の場所です。 神宿る山嶺の息吹は、大武川の上を吹きわたり、この御柱に触れて詩を奏でる…。

     吊られた岩のような鉄塊の意味。何でしょう。 これの有無で大きく印象が変わります。 大武川から流れてきた岩? 大地の力?。 下からワイヤーで固定されていますが、その仕方が少し雑。 当初は風でブラブラ揺らす予定だったとか? その方が面白い。

    風弦を見つけたきっかけ~関のサクラと駒城橋

     風弦を見つけたのは偶然でした。 山高神代桜のある実相寺から、関のサクラ(詳細は後述)へ向かう道中。 通過点であった駒城橋で、思わず車を降りたことがきっかけ。 車は手前に停めて、歩いて橋の中央へ。 こうして素晴らしい山岳風景の中に、溶け込んでいる風弦に気付いたのです。 素通りせず、正体を確かめにいって本当に良かったと思っています。

    タイトル-見出-03_01 山高神代桜:実相寺にある日本三大桜の一本。 同日(2019年4月1)、風弦に訪れる直前に拝観した。 推定樹齢は2000年、日本最古ともされる老大樹だ。
    タイトル-見出-03_02 実相寺:神代桜のある実相寺境内からも甲斐駒ヶ岳の姿が見える。 水仙の花畑と桜並木を前景に霊峰の姿を望むことができる。左奥に神代桜。
    タイトル-見出-03_01 関のサクラ:エドヒガンの巨木で、現地解説板によると幹周5.8m。当日(2019年4月1日)はまだ蕾の状態であった。

     関のサクラについて。 実相寺から西へ道なりに約6㎞。 白洲町横手にあるエドヒガンの巨木です。 個人の所有ですが、道路沿いに立つため見学可能。 現地解説板では幹周5.79m、樹高15.0m。 周辺では神代桜に次ぐ大桜でしょう。 名前の由来は、傍らに関所があり、信州へ続く古道が通っていたという伝承によるもの。 満開となる例年の見頃は4月中旬。 当日は蕾でした(2019年4月1日)。

    おわりに

     最後に大武川砂防公園と風弦の基本情報および周辺地図です。 春に実相寺へ山高神代桜の観桜に訪れる人、時間に余裕があれば、 風弦と関のサクラを巡ってみてください。お勧めですよ。

     なお、大武川砂防公園は少し荒れた状態でした(2019年4月時点)。 風弦の手前まで石空川沿いに続く歩道は、藪のようになっていて、 風弦の周囲にはアカマツらしき若木が繁茂。 北の大武川沿いがそこそこ歩きやすい状態でした。 素晴らしい景観の場所なのに残念。

    大武川砂防公園の基本情報

    ■所在地 :山梨県北杜市武川町柳澤 (大武川と石空川の合流点の堤体上)
    ■問合せ先:不明 (北杜市ホームページ内を参考に)
    ■駐車場 :無し、入口付近に路肩駐車 (橋の上やカーブ付近を避ける)
    ■アクセス:車、中央道・須玉ICから約10㎞
          鉄道、JR中央線・日野春駅から約8㎞
    ■補足  :工事等で立入禁止となる可能性あり
          増水時や雨天時の立入は危険、風弦の近くは落雷の危険性も高い

    風弦の基本情報

    ■制作者 :篠原 勝之
    ■制作年 :平成6 (1994) 年6月
    ■大きさ :1.0m × 1.0m × 30.0m ( 底辺1.0mの四角錐の構造 )
    ■制作協力:早川工業株式会社
    ■寄贈  :財団法人・砂防フロンティア整備推進機構
    ■協賛  :財団法人・日本宝くじ協会

    大武川沿いには風弦の他にも篠原勝之氏の屋外展示作品が3つもある。 甲斐駒大橋の「SKYLINES」、フレンドパークむかわ近くの「水の樹」、大武川復興記念公園の「ゆら水」。 神代桜、風弦と併せて巡ってみては?
    少遠景の記録(近辺の巨木)

    山高神代桜 :北杜市武川町山高、実相寺の境内、日本三大桜の一本
    清泰寺のカヤ:北杜市白州町花水、県内有数の立派なカヤ