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  • 旅日記TOP首都圏外郭放水路 ~首都圏を洪水から守る巨大放水路を見学~

    首都圏外郭放水路 ~首都圏を洪水から守る巨大放水路を見学~(2020.07)

    首都圏外郭放水路は、春日部市の地下深くに造成された世界最大級の地下放水路。 複数の河川から洪水を取込み、東京都内まで続く市街地を守っています。 施設全体を制御し、地下トンネルを流下してきた洪水を 江戸川へ排水している心臓部が、庄和排水機場。 ここにある巨大な第1立坑と、地下神殿こと調圧水槽を見学(予約制)。 その他、各河川に面した洪水の取込口や、江戸川に面した排水口にも立ち寄ってみました。 土木技術の粋を集めた壮大な地下の超構造体をご紹介。
    (写真:調圧水槽)

    はじめに.首都圏外郭放水路と庄和排水機場

     埼玉県東部を流下し東京湾へ注ぐ一級河川の中川。 中流域からは荒川と江戸川、2つの大河川に挟まれた低地であり、昔から洪水被害の頻発する人口密集地でした。 このため春日部市の地点で、中川と共に周囲に平行する4つの河川の洪水を取込み、 流量に余裕のある江戸川へ排水する、首都圏外郭放水路が造成。 2002年6月に暫定稼働を始めて2006年6月に完成。 今日に至るまで流域の洪水被害軽減に大いに貢献しています。

     地下50mを貫く放水トンネルの全長は6.3㎞。 地上に面した主要施設は、西から順番に第5~第1まである立坑と、江戸川に面した庄和排水機場です。 第1立坑を除く4つの立坑は各河川に隣接し、洪水を取り込む流入施設と一体 (5:大落古利根川、4:幸松川、3:中川と倉松川、2:18号水路)。 第1立坑のみ流入施設がなく、庄和排水機場の巨大水槽、調圧水槽との接続部となっています。

     以下は外郭放水路の全体図、庄和排水機場の解説板、各施設を表示した地図。 外郭放水路の詳細は江戸川河川事務所のウェブサイトを参照ください(ページ最後にリンク)。

    首都圏外郭放水路-見出-xx_01 庄和排水機場:江戸川側からの外観。 入口のある建物左端(東端)が龍Q館と呼ばれる展示・学習施設を兼ねる。 1Fが見学会の受付所にもなっていた。2Fに展示資料が多数。
    首都圏外郭放水路-見出-xx_01 庄和排水機場:龍Q館の展示資料の1つ、外郭放水路の全体図と機能を示したパネル。 左(西側)から第5~2立坑の流入施設より洪水が取込まれ、第1立坑と調圧水槽を経て江戸川へ排水される。
    首都圏外郭放水路-見出-xx_01 庄和排水機場:屋外にある解説板。毎秒50立方mの洪水を14mの高さまで揚水できるポンプを4台装備。 ポンプ動力はガスタービンエンジン。 江戸川への放水口は排水樋管という。
    庄和排水機場と全ての立坑の位置を示した地図。 第5~2立坑の区間のトンネルは概ね国道16号線沿い。 流入する河川(第5立坑:古利根川、第4立坑:幸松川、第3立坑:中川倉&松川、第2立坑:18号水路)。

    見学会について

     私が参加した際(2020年7月時点)の見学会について。 有料の事前予約制で、公式ウェブサイト(ページ最後にリンク)より予約。 見学コースは3つあり、調圧水槽だけを見学するコースを選択。 他2コースは、第1立坑、排水機場のポンプ室も併せて見学できるもので、 当時は中止中でした。 なお嬉しいことに、当日は特別に第1立坑も見学させて貰えました。 上部の作業道(キャットウォーク)の一部から見学。 立坑コースが中止中なのと、参加人数が少なかった日なのが理由か。 徳しました。 最新の見学コースと内容は公式ウェブサイトを要確認してください。

     見学会当日、庄和排水機場の龍Q館1Fで受付を済ませた後、調圧水槽の入口へ集合。 そこで外郭放水路の概要と見学会についての説明が始まる。 調圧水槽の内部へ下りた後も、はじめに立坑や調圧水槽についての説明がありました。 説明の後、指定範囲を歩き回れた自由時間は15分ほどだったか。 あっという間でした。せめて30分は居たかった…。

    首都圏外郭放水路-見出-02_01 調圧水槽の地上部:庄和排水機場の南側にある広いグラウンド。 この22m真下がほぼ巨大な調圧水槽の空間となっている。 奥に第1立坑の地上部が見える。
    首都圏外郭放水路-見出-02_02 調圧水槽の入口:グラウンド隅っこ、第1立坑の地上施設の近くにある入口。 排水機場1Fの龍Q館で受付を済ませた後は、ここに集合となった。

    地下神殿こと調圧水槽の見学

     調圧水槽は庄和排水機場の手前、地下22mの位置に造られた巨大水槽。 規模は長さ177m、幅78m、高さ18m。 役割は第1立坑を経て流れてくる洪水の勢いを弱め、安定した排水ポンプの運転を行うこと。 そして緊急停止時に発生する水圧の変化と逆流を調節することです。 巨大空間には、天井を支え地下水の揚力に耐える、自重500トンの柱が59本も林立。 まさに地下神殿と呼ぶに相応しい、壮大かつ荘厳な景観の施設です。

    首都圏外郭放水路-見出-03_01 調圧水槽の内部:端の第1立坑との接続部側。 左の階段を下って底に下りてくる。 洪水流入の稼働時は、天井付近の内壁沿いにある作業道(キャットウォーク)からの見学となる。
    首都圏外郭放水路-見出-03_02 調圧水槽の内部:第1立坑との接続部。 ここが調圧水槽の見所のひとつ。 地下トンネルと繋がる内径30mもの縦穴は圧巻の大きさだ。
    首都圏外郭放水路-見出-03_03 調圧水槽の内部:見学者と比べると柱の巨大さが実感できる。 この日は台風の数日後で、柱の下半分に水流の跡。 定常運転水位の標識がある高さまで、調圧水槽が洪水で満たされていたのだ。
    首都圏外郭放水路-見出-04_04 調圧水槽の内部:排水機場へ続く奥の様子。 巨大な柱が林立する、まさに地下神殿と呼ぶに相応しい景観。 見学範囲は足元にロープの掛けられた中央の柱の位置までだった。
    首都圏外郭放水路-見出-03_05 調圧水槽の内部:数日前まで稼働していたので水溜まりが多い。 稼働後は床面に溜まった土砂を重機で除去。 天井の一部にクレーンで重機を降ろすハッチがある(写ってはいない)。
    首都圏外郭放水路-見出-03_06 調圧水槽の内部:ここから排水ポンプへ繋がる最奥まで歩いて行けたら…。 ポンプ室見学コースが再開したらぜひとも参加したいものだ。 なお内部は真夏でも少し肌寒い気温である。

    足が震える深さの第1立坑を見学

     調圧水槽の見学後、ちょっとだけ第1立坑も見学させて貰えました(事情は上述済)。 上端の内壁沿いにある作業道(キャットウォーク)の一部からの見学。

     第1立坑は内径30m、深さ72mの巨大な円筒状の穴。 日本のH-IIAロケット(全長53m)が、発射台込みで入りそうな大きさ。 実際に真上から目にしてみると、予想を超える深さに驚きました。 落とし物は回収不可(命も)。 怖いくらいに凄みのある景観に大興奮。

     なお全ての立坑は、地下トンネルをメンテナンスする、 車両や設備の搬入口も兼ねています。 大型クレーン車により底まで降ろされていく。 人は常設されているエレベータで降りるのでしょう。 底まで降りて地下トンネルを見学する機会…ないでしょうかね?

    首都圏外郭放水路-見出-04_01 第1立坑:左に内部へ続く作業道入口のある建屋。右に見える調圧水槽の入口建屋と近い。
    首都圏外郭放水路-見出-04_02 第1立坑:真上の横にある建屋の内部。ここから少し下った作業道で見学。 手前にあるのは点検用のエレベーター。 車両など大きなものは真上から大型クレーン車で降ろしている。
    首都圏外郭放水路-見出-03_03 第1立坑:上端の内壁沿いにある作業道の一部からの観. 吸い込まれそうだ!(興奮)。 右下に調圧水槽の接続部。 地下トンネルと繋がる底には、まだ水が残っていた。

    庄和排水機場(龍Q館)の展示物

     見学会の前後では、庄和排水機場に併設された龍Q館の2階に寄ってみてください。 首都圏外郭放水路に関する資料がたくさん。 窓越しに中央操作室も覗くこともできます。 以下、展示物の一部です。

    01:カッタヘッド 首都圏外郭放水路-05_01

    屋外展示.第2~第1立坑間のトンネルを掘ったシールドマシンの面板.

    02:施設断面 首都圏外郭放水路-05_02

    調圧水槽から排水機場を経て江戸川に面した排水樋管までの断面模型

    03:吐出ゲート 首都圏外郭放水路-05_03

    排水機場の1F中央に見えるのは、吐出ゲート弁やバイパスゲート弁の開閉機

    04:ポンプ設備 首都圏外郭放水路-05_04

    かなり精巧につくられた模型.連動して動くやつだ.

    05:ポンプ設備 首都圏外郭放水路-05_05

    説明のパネル.稼働時の音を聞いてみたい.ヒュィィーン!.

    06:ポンプ設備 首都圏外郭放水路-05_06

    説明のパネル.ポンプ4台で最大で毎秒200立方mの洪水を江戸川へ排水.

    07:中央操作室 首都圏外郭放水路-05_07

    窓越しに覗ける外郭放水路の中央操作室.監視カメラのモニタが目を引く.

    08:中央操作室 首都圏外郭放水路-05_08

    監視操作システム端末と非常用操作卓の停止ボタンを凝視した

    おわりに

     第1立坑と調圧水槽および、庄和排水機場の龍Q館を見学したことで、 世界最大級という地下放水路の巨大さと、優れた治水能力を実感できました。 まさしく首都圏を洪水から守る防災地下神殿。 近郊や関東在住の方は、一度は見学会に参加されることをお勧めします。 調圧水槽はまっこと壮観。 巨大な柱が林立する空間は、巨木好きの心にも深く刺さるものがありました。

     まだ続きます…。 見学会の数日後に気づきました。 首都圏外郭放水路には、第1立坑と庄和排水機場の他にも見所があったことを。 それは洪水の入口である他立坑の流入施設と、出口である江戸川に面した排水樋管。 巡ってみました。詳細は以下にて。

     >>各立坑の流入施設と排水樋菅

    関連情報

    少遠景の記録

    巨木・牛島の藤     :春日部市、藤花園にある国指定特別天然記念物の大フジ
    巨木・蓮花院の椋    :春日部市、お寺の蓮花院にある県内最大級のムクノキ